わたしをかえた3冊(中野民夫)

気流の鳴る音』(真木悠介著、筑摩書店、1977年)

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 大学に入学したものの、「これは違う、もっと別の旅が必要だ」と感じていた頃、この本と著者の見田宗介先生に出会い、休学して途上国への旅へと突き動かされた。アメリカの人類学者カスタネダがメキシコのヤキインディオのドンファンの不思議な世界に弟子入りして残した著作などを元に、人間を深いところから解き放つ道を探る刺激的な本だ。「根を持つことと翼を持つことをひとつのものとする道はある。それは全世界をふるさととすることだ」など魅力的な言説に富み、今も触発され続けている。

微笑みを生きる』(ティク・ナット・ハン著、池田久代訳、春秋社、1995年)

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 7年勤めた会社を休職してバークレイに移り住んですぐ、ある書店で「もしあなたが詩人なら、この一枚の紙の中に、雲が浮かんでいるのを見るでしょう」と始まるティク・ナット・ハンの般若心経の解説本に出会った。「なぜなら、雲がなければ雨はなく、雨がなければ木は育たず、木がなければ紙はできないからです」と続き、相互に依存し合った縁起の世界をとてもわかりやすく素敵に語る。本書は欧米で活躍するそのティク・ナット・ハンの多くの著作から、珠玉の部分を集めたエッセンス集だ。

一万年の旅路』(ポーラ・アンダーウッド著、星川淳訳、翔泳社、1998年)

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 屋久島在住の作家・翻訳家の星川淳さん(現グリーンピース・ジャパン事務局長)が、ユーラシア大陸から移動したと言われるネイティブ・アメリカンの物語りを調査している時に見つけた「歩く一族」の壮大な物語。新天地を求め、歩き続け学び続けながらベーリング海を越え五大湖周辺に落ち着くまでの壮大な旅路を、歴史伝承者のポーラが初めて英語で記述した。私たち一人ひとりが今ここに存在するのは、遠い祖先から一度も切れたことのないいのちの流れがあるのだという奇跡への感謝が沸き起こる。

中野民夫(ワークショップ企画プロデューサー&会社員)

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*4月末に、『ファシリテーション−−実践から学ぶスキルとこころ』(共著、岩波書店)、5月中旬に『対話する力−−ファシリテーター23の問い』(共著、日経出版社)が出ています。