巻頭言

巻頭言
笠置 浩史
(本学会常任理事)

会員の皆さま、新年おめでとうございます。皆さまにとって、2010年はどのような年だったのでしょうか。そして、2011年をどのように過ごされたいと願っていらっしゃるでしょうか。

JTAにとりましては、2010年は2年に一度の学会大会の年であり、その企画・運営に力を注いだ一年でした。Newsletter前号でお知らせいたしましたように、大変密度の濃い充実した大会となりました。多くの会員の方々にご参加いただき、交流の時間を持てたことは大きな喜びです。

また、大会のみならず、多彩なセミナー・イベントも開催することができました。2月には鈴木 規夫副会長によるトランスパーソナル学基礎講座。4月にはイギリスより来日されたマギー・ハイド女史と鏡 リュウジ理事によるユング心理学と占星術の講座。7月には経王寺にて、井上 ウィマラ理事によるスピリチュアルケア講座。そして11月には西平 直理事による、世阿弥の稽古とトランスパーソナル学をめぐる講座が行われました。どれも半日の短時間の講座でしたが、いずれも大変充実した内容で、参加者からは深い気づきを得られたと、ご好評をいただきました。毎回遠方より足を運んでくださる方もいらしてありがたく思う一方、学会の運営上どうしても都内での開催となってしまい、地方の方には申し訳なく思っています。東京の本部としては、各支部での取り組みと連携を深め、より一層充実した学会活動の展開を志していきたいと考えています。

また、4月より新たな試みとして、月に一度の勉強会を実施しています。久保 隆司常任理事を中心に、手探り状態で始めた勉強会ですが、参加してくださった方々のご意向を伺いつつ、現在はテキスト講読を中心としたスタイルに落ち着きました。大規模な大会やイベントも大事ですが、会員の皆さまが直接語り合えるこのような場をこそ大切にしたいと思っています。私自身が学生時代に一会員であったことは、より一層その思いを強くしているように思います。

私自身がそうであったように、トランスパーソナルな体験や問題意識を持っていても、それを語れぬ孤独。共有できないもどかしさ、不安。それが、JTAのコミュニティでは遠慮なく語ることができる。共有できる。問題意識は刺激し合い、より深まってゆく。JTAの魅力は、そんなところにあるのではないでしょうか。一般的な、学術的な学会と違い、より広く開かれた学会。それは、トランスパーソナル学というものが、理論と実践を両輪と捉えていることによる必然であろうと思うのです。どちらを欠いても道を誤ってしまう、そんな両輪。インターネットも発達した現代の情報社会においては、どちらかといえば理論の学びは手に入りやすく、むしろ必要なのは、日常の実践について語れる場なのではないかと、最近殊に思います。

ところで、私の好きな星野 富弘さんの詩に、「日日草」という作品があります。

今日も一つ
悲しいことがあった
今日もまた一つ
うれしいことがあった

笑ったり 泣いたり
望んだり あきらめたり
にくんだり 愛したり
…………

そしてこれらの一つ一つを
柔らかく包んでくれた
数え切れないほど沢山の
平凡なことがあった

読むたびに、心がじんわりと暖かくなるような思いがします。

私たちは、「特別」なことを特別扱いしがちです。特別視して、絶対化したり、神聖視したり、固執して囚われたり……。そんな「魔境」に囚われないための戒めと読むのは、こじつけでしょうか。

2011年は大会や学会誌の発行などはありませんが、地道な活動を通じて、会員の皆さまとのつながりをより深く、強くしてゆきたいと願っています。2012年の学会大会の準備も始まります。どうか、多くの方々にご意見をお寄せいただき、皆で学会を発展させてゆければと思います。

JTAの活動が、会員の皆さまにとって、地に足のついた「平凡」な日常をより一層深く充実させる一助となるよう願っています。本年もどうぞよろしくお願いいたします。