特別寄稿 :ナチュラルフードビジネス

特別寄稿
:ナチュラルフードビジネス
李 栄子(本学会常任理事)

日本トランスパーソナル学会の常任理事として携わらせていただいて、5年目に入りました。その間、今後、何をやっていこう……本当はどんな自分を目指したいのか……と日々自分と向き合いながら、次なるステージへ心が向いていました。

2年くらい前でしょうか。何気なく手にしたフリーペーパーで‘野菜ソムリエ’を知り、そこからだんだんと‘玄米菜食’に興味を持ち始めたのがきっかけで、マクロビオティック・クックング・スクールの師範と野菜ソムリエのマイスターを取得するための勉強の日々が続きました。

私はマクロビオティックに出会うまで、食べ物がこれほどまで心と身体に関係しているとは思いませんでした。マクロビオティックとは何でしょうか? マクロビオティックは桜沢 如一氏によって広められた東洋の陰陽の考え方を取りいれた方法で、それは宇宙の秩序にしたがって生きる術であり、食の観点からいえば、玄米と野菜を中心に、旬のものをバランスよく組み合わせた食事をとることです。正しい食事をすれば、健康になり、健康になれば、正しい考え方ができるようになると説いています。その桜沢氏の言葉に「物事の全てに、始めあるものにオワリあり、表あるものにウラあり、表大なればウラもまた大なり」とありました。そんなマクロビオティックの素晴らしさも十分承知していますが、なかなか一般に受け入れられるのは難しいのが現状です。

そんなある日、スクールで知り合った友人からランチに誘われたお店が臨時休業だったため、仕方なく次のお店へと向かったのが、33年間続いている自然食レストランでした。そこのオーナーから声をかけられ、お店で研修生として手伝うようになって間もまなく、会わせたい人がいるからと、ある人物を紹介されました。その出会いが、ナチュラルフードビジネスに携わるきっかけとなったのです。ある出会いが次の出会いへと進んで、短期間でこんなふうに人生の流れは一気に進んでいったのです。

紹介された方は、オーガニック玄米や野菜の素晴らしさを広めていきたいという思いがあって、その手段として、クッキングスクールを開講したいという相談で訪れた方でした。その話を聞いて、オーナーはすぐに私を紹介しようと思ったそうです。紹介された場に行くと、そこはすでにナチュラルフードスタジオ立ち上げスタッフとしての話し合いの場となっていました。そこに、もう一人の女性、グーグルが日本に上陸したときの立ち上げスタッフ一号社員だった方も同席していました。全てが何か見えない力に引き込まれてきたように集まってきた仲間でした。

最近は自然食ブームでヘルシーフードが流行っているとはいえ、ナチュラルフードを広めるビジネスはそんな簡単ではありません。でも、だからこそ、その思いを現実にしていくには本当にやる気のある仲間が必要です。そんな仲間と出会って、今年(2009年)の春からNatural Food studio株式会社の立ち上げスタッフとして参加することになりました。クッキングスクールを開講して、1人でも多くの人に無農薬玄米や野菜を食べてもらうことで、日本の無農薬栽培の農家さんを増やしていこうという農業再生プロジェクトです。今思えば、このプロジェクトに参加した4月くらいは、一年間マクロビオティックや野菜ソムリエとしての知識を勉強してきたとはいえ、あまりに視野の狭い考え方をしていたと感じています。それはお店や宅配で送られてくる有機野菜や有機玄米などを商品としてしか見ていなくて、安心で身体に良いのだから選んでいるという、頭だけで満足していたからです。それらの無農薬の玄米や野菜が、どのような思いで作られているのか、生産者の農家さんのことや、畑や田んぼのこと、土のことなど知らないばかりか、全く興味すらなかったのです。

それが、今回、ナチュラルフードビジネスに出会い、農家さんを周る旅をするようになると、農家さんとの交流を通じて、農家さんの思いや、なぜ無農薬や自然農法にこだわるのか、など、自然に触れながら日本全国でお話を伺っていくうちに、農家さんに対する見方も変わってきました。農家さんは日々、自然と向き合って生きています。それは私たちが土と触れあう時間がないことがどんなに自然から離れているのか、それが心身にどんな影響を及ぼしているのかがわかってきます。また、見えないからといって農薬や化学肥料に対する無頓着さは恐ろしいほどです。自然からできたものへの感謝の心も忘れています。都会にいるとそれらへ心を向ける時間をなくして日々過ごしていますから、人間が本来持っている感も鈍っているのです。まずは、自分が日々何を食べているか考えてみましょう。それはどこでどうやって作られているのか、追究してみてください。そして日本の農業の歴史や現状を少しでも興味を持ってみると、今の日本の問題や、個人個人の心身の問題も見えてくると思います。

ナチュラルフードビジネスはまだ始まったばかりですが、私たちが心身健康で活き活きと生きていくためには日本の無農薬や自然農法でがんばっている農家さんを応援していくことだという思いで日々活動しています。

Natural Food studio : http://www.nfst.jp/p/