特別寄稿:アメリカにおけるインテグラル・コミュニティーの現状と ジョン・エフ・ケネディ大学におけるインテグラル・プログラムのご紹介

特別寄稿
アメリカにおけるインテグラル・コミュニティーの現状と
ジョン・エフ・ケネディ大学におけるインテグラル・プログラムのご紹介
加藤 洋平

JTA会員の皆様、はじめまして。私は2011年4月より、米国カリフォルニア州にあるジョン・エフ・ケネディ大学にてケン・ウィルバーのインテグラル理論及び様々な心理学を学んでおります(統合心理学科修士課程)。

この記事では、アメリカにおけるインテグラル・コミュニティーの現状と私が現在在籍しているジョン・エフ・ケネディ大学のプログラム内容を中心にお話しいたします。

最初に、アメリカにおけるインテグラル・コミュニティーの現状をお話しさせて頂くと、私が住んでいるベイエリアには「BAI(ベイエリア・インテグラル)」という非常に活気を帯びたインテグラル・コミュニティーがあります。

このコミュニティーには様々なインテグラル・プラクティショナー達(インテグラル理論を現実世界の様々な領域に活用している実践者)が集い、2~3週間に一度、著名なインテグラル・プラクティショナー、著者、学者、スピリチャル・ティーチャーなどを招き、講演会、ワークショップなどが頻繁に行われています。私も過去何度が講演会やワークショップに参加をし、ここカリフォルニアにおけるインテグラル・ムーブメントの高まりを肌で感じることができました。先日のワークショップでは何とインテグラル理論の提唱者であるケン・ウィルバー氏とイベント会場をつなぎ、直々にインテグラル・インクワイアリー(統合的内省の実践)を教わるという非常に稀な機会に恵まれました。

さて、今お話ししたのは私が現在在住しているベイエリア近郊のインテグラル・コミュニティーの現状です。この夏に私は幸運にもインテグラル理論をビジネス、政治、教育、エコロジーなどの様々な分野に活用している世界中のインテグラル・プラクティショナー達が一堂に会する「インテグラル・リーダーシップ・コラボレイティブ」というオンライン上の一大国際会議にボランティア・スタッフとして携わる機会を得ました。

この国際会議は4週間に渡って行われ、非常に熱い夏だったと記憶しております。この国際会議はケン・ウィルバー氏の基調講演に始まり、その後も錚々たるメンバーによる講演と議論がなされました。具体的には、「スパイラル・ダイナミクス」で有名なドン・ベック氏、ハーバード大学教育大学院で人間の心・脳・教育を研究し、そこでの研究成果をFBIやCIAに提供しているザック・スタイン氏、インテグラル理論を企業戦略やリーダーシップ開発に活用しているコンサルティング会社「Stagen」の代表であるランド・ステイゴン氏、人間の意識構造の発達に関する研究で著名なスザンヌ・クック・グロイター氏など50名近くの方々の洞察に溢れた講演会と世界中のインテグラル・プラクティショナー達が繰り広げる議論の中に身を置くことが出来ました。

ここで私はボランティア・スタッフとして様々な方々とネットワークを構築することができ、アメリカのみならずヨーロッパにおけるインテグラル・ムーブメントの様子なども聞くことができました。日本にいた時は日本以外の世界の様子がわからず、インテグラル理論が果たしてどの程度現実世界の諸問題に適用され、そしてどのくらいの実践者が存在するのか皆目見当がつかない状況でありました。しかし、インテグラル理論の発祥の地アメリカに来てみて、アメリカにおけるインテグラル・ムーブメントの高まりを実際に感じ、そしてアメリカのみならず世界規模でインテグラル・ムーブメントの機運が学問の世界・実務の世界に高まりつつあることを全身で感じております。

次に、ジョン・エフ・ケネディ大学について、私が在籍するプログラムの内容を中心にお話ししたいと思います。ジョン・エフ・ケネディ大学にはトランスパーソナル心理学の修士課程プログラム、人間の意識を探求するコンシャスネス・スタディーズの修士課程プログラム、インテグラル理論と様々な心理学を学ぶ修士課程プログラム、そしてインテグラル理論を心理療法の分野に活用したインテグラル・サイコセラピーの修士課程プログラム(これは唯一3年間のプログラムであり、セラピストを養成するために最後の一年間はインターン期間となっているようです)など非常にユニークなプログラムを有しています。ジョン・エフ・ケネディ大学の大きな特徴としては規模の小さな大学ですので、どの授業も日本の大学で行われているゼミナール教育のような先生と生徒の関係が近く、そして生徒同士の関係が非常に密な教育が提供されています。

そして、私が在籍する「統合心理学科」プログラムをもう少し詳しくお話しさせていただきますと、インテグラル理論を体系的に学ぶ「インテグラル理論A及びB」という授業や、人間の意識構造の発達を学ぶ「発達心理学」の授業、心理学と人間の身体との関係を学ぶ「ソマティック心理学」の授業、「トランスパーソナル心理学」の授業、人間のエゴの部分と精神性(spirit)を融合させたユニークな実践技法である「ダイアモンド・ハート(ダイアモンド・アプローチ)」の授業、「精神統合学」の授業など挙げれば切りがありませんが、多面的に「人間」存在を探求するための非常にユニークかつバラエティに富んだクラスが設けられております。まさしく「インテグラル」なカリキュラム構成となっています。

また、このプログラムの特徴としては選択科目の履修が非常に柔軟であり、かつ多岐に渡ることです。例えば、将来コーチとして活躍したい生徒のためには「プロフェッショナル・コーチング(インテグラル・コーチング)」の授業が設けられていたり、著述家を目指す生徒のためには「Publishing & Media」という授業が設けられていたり、それ以外にもリーダーシップの分野で活躍したい生徒、社会企業家を目指す生徒、エコセラピストを目指す生徒のための授業も設けられています(特に最後に紹介した三つは修士号にプラスして資格が取得できます)。

こうしたプロフェッショナル科目以外にも他学部の授業も柔軟に履修することができ、私自身もこれまで自分の関心領域に合わせて、人間の心と脳について学習する「ニューロフィロソフィー・ニューロサイエンス」の授業、「意識のパラダイム」、「夢と意識の状態」など様々な授業を履修してきました。

インテグラル・コミュニティーの現状、ジョン・エフ・ケネディ大学のプログラムについて他にも書きたいことは山ほどありますが、最後に私の抱負を述べさせていただきますと、ベイエリアというインテグラル・ムーブメントの中心地で得られた経験、そしてジョン・エフ・ケネディ大学で得られた知見を基に、インテグラル・プラクティショナーとしての実践活動に今後もより一層励んでいきたいと思います。

加藤 洋平(かとう・ようへい)
一橋大学商学部卒業後、四大会計事務所にて国際税務コンサルタントの仕事に従事。現在、ジョン・エフ・ケネディ大学統合心理学科修士課程にて、インテグラル理論及び幅広く心理学を学習している。また、インテグラル・コーチング・カナダより国際コーチング連盟認定の「インテグラル・コーチング」の資格を取得し、現在インテグラル・コーチングの活動にも従事している(日本在住のクライアントの方々にはスカイプでのご提供も行っております)。

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