当学会会長 諸富からのメッセージ 2010年2月

神はどこにいるのか

人生のさまざまな問題に直面し、思い悩んだ時・・・あまりに悩んんだため、もうすべてを投げ出したく経ってしまった時・・・私たちは平常心を失って、うろたえて、取り乱し、さらに問題を大きくしてしまいがちです。

そして、そのような時、私たちは、こうつぶやきます。
「神さま、あなたはどこにいるのですか」と。

神は、どこにいるのでしょうか。
私たち人間から、はるかに遠くに・・・。
そして、同時に、私たち人間のあまりに身近に・・・。
私たち、一人ひとりのうちに、神は、存在しているのです。

けれども、人生で、あまりにつらい時、苦しい時、私たちはつい、このことを忘れてしまいがちです。そして、自分を「人生の犠牲者」の側に置きがちです。「私はこんなにつらいんだ・・・」と悲劇の主人公になったかのように思いがちなのです。

私にも、そんなときがあります。あまりにつらくて、悲しくて、ただただ、さみしくて、こころが痛くて、泣き叫びたくなることが・・・・。

そして、そんなふうに、「私はつらい」と泣き叫ぶとき、本人はただ、自分の苦しい胸のうちを語っているだけのつもりなのに、まわりの人は、自分が責められているかのように感じてしまいがちです。そして「つらいのは、私だって・・・」となり、お互いがお互いを責め合うことになりがちなのです。

多くの人間関係のトラブルにおいて、私たちは自分を「被害者や犠牲者の立場」=「私だってつらいんだ」に置き、相手を責めがちなのです。

こうした悪循環から抜け出すために必要なこと。それは、私たちの「うちなる神」を思い出し、その視点に立って、全体を見てみることです。

ほんの一瞬だけ、「神の視点」に立って、状況全体を俯瞰し、自分自身に語りかけてみるのです。

そうすることで、私たちは、自分を「つらい。つらい」とばかり言っている犠牲者の立場から、離脱させることができます。神さまは、自分を犠牲者であるかのように思って、泣き叫ぶことなど、決してされないからです。

「神の視点」に立ってみることで、私たちは、冷静さを取り戻し、自分の内側から「賢明なる智慧の力」を引き出して、状況全体に対処していくことができるのです。

アーノルド・ミンデルのプロセスワークでは「大地の智慧」を経由することで、私たち1人ひとりのちに宿っている「全知全能の神」の智慧(プロセスマインド)を引き出していこうとします。私が最近、書き始めた本で提唱している「スピリチュアル・カウンセリング」も、つまるところ、私たち1人1人のうちにある、この「神の視点」を育んでいくことを目指しています。

解決しようがないほど複雑な問題にぶつかっているように思えるとき、一瞬、「神の視点」に立ってみる。すると、不思議なほど冷静になれて、賢明な智慧がわいてくることがあるものです。

では、死にたくなるほどつらいとき、泣き叫びたくなるほど混乱しているとき、私たちは何を通して、「神」とつながることができるのでしょうか。

私は、それは、「思い出」を通してだ、と思います。
ドストエフスキーが「カマラーゾフの兄弟」のラストで語った言葉。

「私たちの中に、ひとつでも、大切な思い出があるのならば、最後はそれが、私たちを救ってくれるのです」

母から絶対的に愛された、という「思い出」。
愛するあの人から、ほんの一瞬でもいい、たしかにあの時、あの瞬間は、絶対的な愛を注いでもらえた、という「思い出」。その「思い出」の中に神は姿をあらわし、私たちを救いとってくれるのだと思います。

いずれにせよ、私たちすべての人間の、1人ひとりのうちに、「神」が存在しています。
「うちなる神」が、いない人間など、1人もいないのです。
否、人間だけではありません。
この世のあらゆるすべての存在のうちには、神性が宿っています。
一杯のコーヒーのうちにも、一粒のチョコレートのうちにも・・・。
すべては、「神のはたらき」がとった一つの形にほかならないからです。
私たち人間の特別なところは、「全知全能の神」をイメージし、思い浮かべることができるところです。

「全知全能の神」を思い浮かべることができる・・・・そのこと自体、私たちのうちの一部に「全知全能の神」が宿っていることを物語っています。もちろん、神と人間のあいだには、絶対的な隔たりがあります。神は、人間から見れば、あまりに遠く、あまりに偉大な存在です。私たち人間は、あまりに小さく、愚かな存在です。

けれども、同時に、神は、ただちにそのままで私たち自身としてこの世に姿を現してもいます。あまりに遠く、あまりに親しい・・・ここに神の絶対的な逆説性があります。

ビクトール・フランクルは、「神とは、私たちのもっとも親密な、自己対話の相手である」と言います(『識られざる神』)

こうした神と人間との関係について、もっとも根源的な思索を展開した一人が、宗教哲学者、滝沢克己さんでしょう。滝沢先生は、「神、我らとともに在す」(インマヌエル)という「神と人との根源的なつながり、という原事実」に立つならば、親鸞の浄土真宗も、禅も、法華経も、キリスト教と同じ「根底」に立つ姉妹宗教であることを指し示したのです。

仏教とキリスト教だけではありません。あらゆる宗教は、この「原事実」を異なる角度から自己表現したものであり、同じ一つの「原事実」という「人間存在の根底」のうえに成り立つものだというのです。諸宗教の「対話」ではなく、諸宗教は「根底においては一つ」というのです。

実は、人生に思い悩んでいた二十歳のときの私にもっとも決定的な影響を与えた一人が、この滝沢克己先生でした。そして滝沢先生を経由しての、フランクルであり、八木誠一であり、久松真一でした。先日滝沢先生の生誕百年を記念して『滝沢克己を語る』という本が出版され、私もほんの4ページだけ、書かせていただきました。

滝沢先生は、「人間のあらゆるはたらきに先立って、絶対無条件に、一つの聖なる決定が直属している」と考えました。この「絶対無条件の、聖なる決定」こそ、「神、われらとともに在す」というインマヌエルの事実です。その上で、先生は超越者と人間との関係を「不可分、不可同、不可逆」という論理で捕らえたのです。

私は、この「神と人とは、不可分、不可同、不可逆」という思想に触れたときほど、目の前の霧が晴れて、ハッとした、という体験がありません。それほど、インパクトの大きな思想でした。この滝沢先生の思想に触れたからこそ、修士論文も、博士論文も書けたし、こうやって何とか今も生きていられるのだと思います。トランスパーソナル心理学の先駆的存在としても、もっと世界に知られるべき方だと思っています。

今回は、ちょっとまじめになりすぎたので、この1週間くらいの間に見た映画で、お勧めの作品と、最近、いつも聞いている曲を紹介しておきます。

○「トウキョウソナタ
 何気ない日常がこんなふうに壊れていくのだ、という様子が見事に描かれています。かなり深い真実をさりげなく表現していて、こころにかかわる勉強をされている人には、絶対お勧めです。この1年に見た作品で一番かも。

○「さよなら絶望先生
 アニメです。かなりキツイ内容なので、ついていけない人も多いと思いますが、笑いの中に深い真実が・・・。生徒と教師の関係って、実際、案外、こんなものかもしれません。糸色先生が、生徒の元気に救われている感じが好きです。僕ははまりました。教師のほうが生徒よりも、弱いですよね。

○「幸福」(市川昆監督)
 子どものころにテレビで見た記憶があります。若いころの水谷豊が主演。うちの両親も毎月のように家出していたので、こういうのは、ぐっときます。子役の男の子の顔が、小学生のころの僕そっくりです。

○「カンナさん 大成功です!
 とにかく、元気が出る映画です。弱さに対するあたたかい視線にも救われます。整形したくなったりして。

○「アバター 3D」
 これは映画館で見ないと。アァーと思ってる間に2時間すぎてました。

○「抱擁のかけら」
 究極の愛! 

最近、毎日、聴いてる曲は藤田麻衣子さんです。

「パンジー」「会いたい」「恋に落ちて」「運命の人」・・・・歌詞も、声も、まっすぐな感じが心を浄化してくれます。

明日は、彼女のインストア・ライブに行って、サインをもらい(笑)→渋谷で散髪し→夜は某UWF系道場でキックボクシングの練習の予定。最後は、道場の雑巾がけです。(ウッシャ!)

研修会情報

○さて、「気づきと学びの心理学研究会 アウエアネス」主催による、今年最初のワークショップ「4月24-25日「幸運体質」になる! 人生創造ワークショップ」が少しずつ近づいてきました。

クランボルツやミンデルら、最新の心理学者の知見をもとに、偶然(シンクロニシティ)をいかして人生を豊かにする方法を学んでいきます。教師や保育、看護にかかわっている方、カウセラー、コーチ、キャリアコンサルタントなどの方にもおすすめです。

ちまたの「人生成功法」とは異なる、深い内容を、楽しくわかりやすく、けれども、心理学の最新理論にもとづき、スピリチュアルな大きな気づきをともないながら学んでいきます。

7月の「ほんとうの自分になる! 人間性心理学体験ワークショップ」8月の「運命の声を聴く! トランスパーソナル心理学体験ワークショップ」と並ぶ、この研究会の3大人気ワークショップのひとつです。

今年1年、幸せの波(ハッピーウェーブ)にのって生きていくためにも、人のこころにかかわるお仕事をされている方は、スキルアップのためにも、ぜひご参加ください!

【講師】:諸富 祥彦
【場所】:都内
【参加費】28,000円
アウネネス会員 2千円引き
トランスパーソナル学会会員 千円引き
*1日のみの参加 16,000円

【申込み方法】
① ご希望のワークショップ名
② お名前
③ 郵便番号・ご住所
④ 連絡先(電話・FAX・メール等)
⑤ アウエアネス参加有の場合はその旨
を、ご記入の上、メール、ファックス、郵便にてお申込みください。

※ お申込みをいただいた後、1週間以内にご連絡させていただきます。1週間過ぎても事務局から連絡がない場合は、届いていない可能性がありますので再度ご連絡ください。

気づきと学びの心理学研究会 <アウエアネス>事務局
E-mail: awareness*morotomi.net(*を@に変換してください)
FAX : 03-6893-6701
住 所: 〒 101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-1 明治大学14号館 諸富研究室内

最新刊情報!

4872904451『男の子の育て方 「結婚力」「学力」「仕事力」を育てるために0歳ー12歳の子を持つ親が最低限しておくべきこと』(WAVE出版)

私のカウンセリング体験をもとにした、これまでにない実践的な男の子の育児法です。
お子さんが40歳になったとき、後悔しないために、今この本をお読みください

「いいこと」が次々起こる幸運スイッチ『いいいことが次々起こる 幸運スイッチ!』(PHP)

1日3分で、あなたの幸運スィッチをオンに!
ほんとうに幸せな人がひそかにやっているコツを紹介。

■教師向けの本
生と死を見つめる「いのち」の道徳授業 中学校 (道徳授業を研究するシリーズ)『生と死を見つめる いのちの道徳授業』(明治図書)

ようやく出ました!
かなり深い、真剣勝負の授業満載です

クラス会議で学級は変わる!『クラス会議で学級は変わる!』(明治図書)

カリスマ若手小学校教師、森重君が書いた単著がついに発刊!
明治図書ランキングで1位に。「学級作りの最終兵器」がこれだと私は思っています。

以下の本もよろしく!