書評:『魂の恋愛 soul’s love ~プラトニックラブを超えて~』

書評 : 尾崎 真奈美著
魂の恋愛 soul’s love ~プラトニックラブを超えて~
(KKベストセラーズ、2006年11月)
笠置 浩史(本学会常任理事)

魂の恋愛 soul’s love―プラトニックラブを超えて

著者の尾崎 真奈美は、本学会理事(前常任理事)であり、複数の大学で教鞭を執る傍ら、スピリチュアリティー研究会主宰など、精力的に活躍している心理学者である。

 その尾崎の2冊目の単著にあたるのが、この『魂の恋愛』である。帯に「スピリチュアル恋愛バイブル」とあるように、女性向けの恋愛指南本の体裁をとってはいる。しかし、その言わんとするところは、普遍的な「よりよい生き方」の推奨である。だから、恋愛に疎い男性の私でも、居心地の悪さを感ずることなく読むことができるのだ。前著『奇跡の起こし方』(グラフ社、2006)では、ケン・ウィルバーの思想のエッセンスを取り入れ、「みんなつながっていて、誰もが正しいんだよ」というコスモロジーを説いた尾崎であるが、本書においてもその思想は継承されていると言ってよい。その要訣は、「世界はあなたが作っている、気がつくだけでほら!」というメッセージである。

 尾崎の表現は、徹底して抑制的である。つまり、安易に答えを与えるようなことはしない。「スピリチュアリティーってなんなのでしょうか? / 答えは…… / 皆さん自身で出してくださいね!」『あなた自身の答えは、あなたのためだけの答えなのです。 / この本は、あなたがそれを見つけることをお手伝いするだけです」 答えを求めて本書を手にとった読者にとっては、肩透かしを食わされたように感じるかもしれない。しかし、あまりにも安易な「スピリチュアル本」が氾濫する現在、このようなスタンスは貴重である。

 恋愛は、ともするとエゴとエゴのぶつかり合いになりうる。相手にばかり求め、自分を見ようとさえしない場合もあろう。しかしながら、恋愛においてもっとも大切なことは、自分を知るということ。そして、自分が自分らしく輝くことであると、尾崎は言う。本書では、「あなたがあなたらしく輝くことに関する情報だけ」を集めたという。

 例えば、スピリチュアリティー診断テスト、ユニークな「お掃除セラピー」や、「アートセラピー」、「光のイメージワーク」、「NEWSTART」と呼ばれる健康法、物理学的アプローチによる意識モデルなどが紹介されている。軽い筆致で描かれてはいるが、いずれも著者の学術的な研究の蓄積に基づいている。中でも、第4章「恋愛の物理学……波動による愛と癒し」における、意識の非局在的モデルは実に興味深い。今後より一層の研究の深化が待たれるであろう。

 とかく、一貫して主張されるのは、究極には「あなたの意識しだい」であるということ。そして、常にすでに愛と光に満ちているこの世界のエネルギーに気づくことの大切さ。もちろん、無反省なポジティブ指向は危険を伴う。しかし、本書における抑制的な(ある意味でプラトニックな)提案には、背筋がぴんと伸びるような、さわやかな読後感を覚える。多くの人が味わい、気づきを得てゆけば、世界はより豊かになるのではないか。そんな世界を見てみたいと思うのである。