【その32】現代の脱藩者?

NHKの大河ドラマで竜馬伝がはじまったせいか、本屋に行くと坂本竜馬の本が並んでいます。また、去年からの歴女ブームで、幕末の志士関係の本も多いですね。これ、面白い現象だと思います。

幕末に活躍した人達の多くは、脱藩者です。坂本竜馬もそうだし、幕末の志士達に多大な影響を与えた吉田松陰も脱藩した経験があります。

彼らは、藩という枠組みの中では、自分のやりたいことができないと感じていた人達です。彼らは、幕末から明治維新にかけて、大きな役割を果たしました。勝海舟などは、従来の制度にこだわらず、有為な人材を幅広く集めようとしていたらしく、脱藩者だろうがなんだろうが、有能な人材を世に出そうとしました。全ての脱藩者とは言えませんが、坂本竜馬や吉田松陰などをはじめ、実際有能な人達もたくさんいたわけです。

カウンセリングをしていると、不登校になった学生や、会社を休職した人達や退職した人達、それからひきこもりの人達、フリーターの人達などとお会いする機会があります。彼らとお話をしていると、彼らは、現代のシステムに嫌気がさした脱藩者なんじゃないかと思います。

「現在の脱藩者」の中には、興味深い考え方をしている人も少なくありませんし、彼らの問題意識には共感することも少なくありません。彼らは、自分の思いをためすことも、あるいは、主張することさえもできなかったのではないかと思います。

現在の日本は、みんな同じ価値観を持つことを強要されているように感じます。学校では偏差値でジャッジされ、仲間内でさえも空気を読まねばならず、公園デビューなんてばかばかしい規範があり、会社の中には見えない規範があって、その規範に反する発言は、はばかられます。

以前、ある会社を訪ねた時、みなさんが同じような発言をされるのに、違和感を持ちました。そもそも使う単語もしゃべり方も同じなんですね。「これからのビジネスモデルは・・」、「お客様とwin winの関係を・・」などなど、お話はもっともなんですが、しゃべり方まで同じとなると、ちょっと気味悪くなりますね。

以前あった「自己責任論騒ぎ」なんていうことがありましたが、私は、あれを見ていて、日本中がヒステリーになったみたいで恐怖すら感じたものです。2004年に起きたことなのですが、イラクで支援活動をしていた3人の若者が拉致された事件です。あの時、マスコミを含め、日本中が彼らが拉致されたのは「自己責任だ」と大合唱していました。まったく気味悪い現象です。この傾向は、今でも変わらないと言ってよいでしょう。

これでは、脱藩もしたくなるでしょう。

「学校や会社をドロップアウトした人達と、幕末の脱藩者はちがう。幕末の志士は、立派な志があったじゃないか。世の中を変えようとしていたではないか」という人達もいるかもしれませんが、私はそうは思わないんですね。

幕末には、尊王攘夷という大義名分があったから元気だったのであって、そういうものがなかったら、志士になっていった人達もうつうつとしていたのではないかと思います。

だから、学校や会社からドロップアウトした人達を、十把一絡げに負け組みたいに見ている風潮は、どうも嫌ですね。もちろん問題があって退学したり退社したりした人もいるのでしょうけど、それは特殊なケースだと思いますが・・。

私は、ドロップアウトした人達が、ちゃんと主張できて、いつでもやりなおしのきくシステムができていかないといけないと思うんです。

私には少々アイデアがあるのですが、10年くらいかけて、そうしたシステムを作ってけたらと思います。まあ、今は金なし力なしですが・・。これは私の初夢であります。

(第32回おわり)

向後善之

日本トランスパーソナル学会 事務局長

カウンセリングオフィス 「ハートコンシェルジュ」 カウンセラー