わたしをかえた3冊(鏡リュウジ)

澁澤龍彦 『黒魔術の手帖

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この本を手にしたのは10代の半ば。
西洋の隠秘学をめぐる名文にぞくぞくしたのをいまでもよく覚えています。西洋にももうひとつの知の伝統が存在する、ということを教えてくれたのがこの本。もちろん、いまの研究水準からすると間違いなどもあるのですが、しかし、それでも今なお、魔の伝統の暗い輝きをこの本は放っていて、ときどき手に取りたくなります。

この本からタロットや占星術、魔術といった世界に触手を伸ばしていったんです。

ヤッフェ編『ユング自伝

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この記事をお読みの方なら紹介するまでもないでしょう。かのユングの「自伝」。正確には弟子たちが
編纂した、「正伝」ですが、合理的なナンバー1の人格とオカルト的なナンバー2の人格がユングのなかにともに存在していて、それが葛藤しているという記述には、感激させられました。近代人が抱える葛藤がこの本には見事に表わされていると思います。

パノフスキー他『土星とメランコリー―自然哲学、宗教、芸術の歴史における研究
元型的心理学の重要なリソースのひとつがルネサンスの思想にあるということはご存知でしょう。たとえばジェイムズ・ヒルマンのいう「南の知」の潮流の巨人の一人に15世紀フィレンツエの占星術家であり哲学者であるマルシリオ・フィチーノがいます。

フィチーノは自らの体質を「メランコリア」と診断していたわけですが、それは近代的な心理症状ではなく、より宇宙論的な広がりをもっていました。この大著は、メランコリーをめぐって文学、美術、占星術などを網羅してゆく、真の意味での人文学的研究の精華。



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