【その41】「パワハラ撃退 その2」

B部長と、C課長が出社するのは、8時50分です。いつもふたりは、就業時間前にちょっとしたミーティングをしていました。

その時間を狙って、Fさんひきいる数人が、B部長とC課長に対し、これまでのパワハラ行為は許されるものではないということを伝えました。B部長とC課長は、当然のことながらFさんたちの言葉に耳を貸さず、激怒し怒鳴り始めました。しかし、数人が彼らを囲んでいるわけですから、B部長もC課長もそこから逃げ出すわけにはいきません。

B部長と、C課長があくまでパワハラを認めず、態度を改めないということが明らかになったとき、Gさんひきいる残りの数人は、社長室に向かいました。社長は、いつも9時ぴったりに出社します。社長も驚いたことでしょう。出社したとたん、数人の社員が駆け込んできて、B部長とC課長のパワハラを訴え始めたのですから・・。社長秘書が彼らを止めようとしたのですが、Gさん達の勢いにはかないませんでした。

Gさん達は、前日に用意した課員全員の署名がはいった書類を社長にわたしました。話を聞いた社長は、至急調査委員会を作って対応することを約束しました。

彼らが、パワハラ相談室に相談するのではなく、社長に訴えるという手段を取ったのにはわけがあります。B部長自身が、パワハラ相談室の責任者だったからです。

この電光石火の10分間が、彼らの作戦でした。

作戦は、見事に成功し、調査委員会により、B部長とC課長の行為はパワハラであると結論付けられました。そして、彼らには、処分が下されました。B部長もC課長も降格されたのです。

彼らの成功要因をあげると:

1)課員全員の同意を得たうえでの作戦だった。

2)パワハラの実態を明確に書面化した。

3)短時間の勝負にした(長引くとうやむやにされかねないから)。

4)組織のトップに直接訴えた。

5)幸いトップが、公平な判断をする人だった。

もっと穏便なパワハラ対応もあるかもしれません。しかし、この会社のように、B部長のような人がパワハラ相談室の責任者であるような場合には、こうした過激な手段も仕方がないでしょう。

こうした過激なパワハラ対応法を実行する時には、気をつけなきゃいけない点があります。

ひとつは、訴える相手(この場合は、社長)が、どんな人なのかをできるだけ把握しておく必要があります。トップもハラサーである場合には、パワハラ撃退は、ほぼ不可能と言ってよいでしょう。こうした場合には、外部の機関に訴えるしかありません。

次に気をつけなきゃいけないのは、全員一致で要求を出すと言うのが理想なのですが、その要求に参加しない人の自由を認めると言うことです。パワハラを訴えることに反対な人を、裏切り者扱いのようにしてしまったら、パワハラそのものを撃退できても、職場内にしこりが残るでしょう。あくまで、個人個人の自由意思を尊重すべきです。

また、パワハラ撃退がうまくいった後にも注意が必要です。前述した例では、ハラサーが降格処分を受けたわけですが、そうした処分を見て、訴えた側が、自分たちはやりすぎてしまったのではないかと罪悪感を持ってしまうことがあります。「パワハラがおさまればよくて、なにもB部長やC課長の降格までは求めていなかった」という気持ちを持つ人もいたかもしれません。

この辺は、あらかじめ考慮に入れておくことです。いざ、パワハラを訴えたら、訴えられた人は、降格までいかなくても、会社での居場所がなくなる状況になることも少なくありません。ハラサー達がそうした事態になっても、パワハラを訴えるという腹の据わりがなければ、こうした過激な方法はうまくいきません。そうした腹の据わりがない場合、リーダー的な存在の人達が、課員から責められることにもなりかねません。つまり、上司からのパワハラは撃退したけれど、その結果、課内の内部分裂が起きてしまったなんてことにもなりかねないのです。そうしたことが起こり得ると言うこともあらかじめ考慮しておくことでしょう。

まあ、こんな過激な方法が必要ない世の中が一番いいですね。

向後善之

日本トランスパーソナル学会 常任理事 事務局長

ハートコンシェルジュ カウンセラー