【その37】パワハラの実態・・その1

パワハラは、相変わらず、多いです・・というか、最近増えているように思えます。これから、お話しするのは、実際にあったパワハラの実態です。

A氏は、大学院の修士課程を修了して、入社4年目の28歳です。その頃、A氏は、ある大きなプロジェクトにかかわっていました。A氏にすれば、初めての大きなプロジェクトで、とても張り切っておりました。しかし、そのプロジェクトは、目的はよいのですが、どうもうまくオーガナイズできておらず、方針が定まらないため、数十人の人達が、毎日深夜まで残業するような事態になっておりました。その結果、プロジェクトに関わっている人達には、不満が充満していました。

そんな状態が1ヶ月ほど続き、中締めということで、みんな残業せずに早く帰ることができる日がありました。A氏は、同じくプロジェクトに参加している1年後輩のB氏(27歳)と連れだって、退社後飲み屋街に繰り出しました。A氏とB氏が、いきつけの焼き鳥屋に行くと、そこには、やはりプロジェクトに関わっているC課長と、D課長がすでに飲んでおりました。A氏とB氏を見つけたC課長が手招きし、一緒に飲むことになったのです。A氏とB氏は、先輩におごってもらえるかもという期待を持ちながら、C課長D課長の席に行きました。

A氏もB氏も、C課長のことはよく知っていたのですが、D課長のことはよく知りませんでした。C課長は、なんでも話せる先輩で、若手からはとても人望がある人でした。D課長と飲むのは初めてでしたが、彼もなかなか気さくそうに見えました。その場での話題はやはり、そのとき関わっていたプロジェクトについてでした。C課長もD課長も、プロジェクトのやり方については、不満を述べておりました。A氏とB氏は、若手なので自分からは意見を言わずに聞き役に回っていたのですが、C課長とD課長が同じような思いでいることに安心感を覚えました。

ほどよく酔いが回ってきた頃、D課長が、A氏とB氏に向かって、「君ら若手も、いろいろ不満があるだろう。今日は無礼講だから、思ったことを何でも言ってみろ」と言います。後から思うと、「無礼講」などと言う言葉をまともに受け取ってしまったのが悪いのですが、酔いも回っていたA氏は、日頃感じていたことをとうとうと述べはじめました。ちょっと過激なことも言ったのですが、A氏は、C課長とD課長がさっきまで話していたことと同じようなレベルだし、せっかくの無礼講だし、この際だから、あまり遠慮せずに自分の意見を言ってしまおうと思ったのです。気持ちよく話していたA氏は、D課長のかおがこわばってきたことには気づきませんでした。A氏が我に帰った?のは、D課長の突然の「なんなんだそれは!」という言葉でした。

A氏はなんのことやらわからず唖然としていると、D課長の機関銃のような説教が始まりました。「お前は生意気だ!」、「お前らみたいな若いのは、上から言われたことをただ聞いていればいいんだ!」、「えらそーなことを言うんじゃない!」、「そんな意見は10年早い」などと反論する余地もなく、矢継ぎ早に、A氏はD課長から批判されました。C課長が、「まあ、いいじゃないか。お前が無礼講って言ったんだから・・」ととりなしても、D課長の怒りは収まりません。

その後も延々と、D課長のお説教が続きました。C課長は、「もういいかげんにしろよ」と言うのですが、D課長は、「若いものには、しっかりと言い聞かせなきゃだめだ!」と、聞く耳を持ちません。A氏は、ショックを受けることはなく、ただばかばかしい思いでD課長のお説教を聞いていました。

A氏の考えていたことは、「酔っ払いの相手をしても仕方がないので、早く退散しよう」です。D課長のお説教が一息ついた時(それまで30分ぐらいの時間が過ぎていました)、A氏とB氏は、「ごちそうさまでした」と、まだ物を言いたそうなD課長とうんざりした顔のC課長にお礼を言い、その焼き鳥屋を出ました。

A氏とB氏は、他の店で飲みなおすことにしました。「いやー、D課長が、ああいう人だとはねぇー」とA氏が言うと、B氏も「びっくりしましたね。飲みなおして気分を変えましょう」と言いました。A氏とB氏は、気分よく飲み直し、その後、もう一軒寄ってから帰ろうと言うことになり、なじみのスナックに行き、その店のママさんたちと馬鹿話をしながら、楽しく飲んでいました。

そこに、なんと、C課長とD課長が入ってきたのです。彼らも帰る前にもう1軒というこんたんだったのでしょう。

つづく

向後善之

日本トランスパーソナル学会 常任理事 事務局長