【プログラム紹介】講演「彼方のコトバ、コトバの彼方ースピリチュアリティの始原」

2日目14:30からは、講演•対談「彼方のコトバ、コトバの彼方ースピリチュアリティの始原」。

講演はあの三田文学編集長の若松英輔さん。対談は占星術研究家の鏡 リュウジさんです。こんなビックな対談、滅多にないですよ!

以下、鏡 リュウジさんからコメントをいただきました!

第11回大会は、濃密な時間となります!
この空気を一緒に味わいましょう!

大会参加についてはこちらから
http://transpersonal.jp/11th/apply/

この9月の日本トランスパーソナル学会の大会で、若松英輔さんとお話しさせていただけることになりました。

若松さんのお名前は、以前から別の方面からお聞きはしていたのですが、ここ数年、文壇の世界で、あるいはさらに幅広くめきめきとその存在感を増してこられました。現在はあの『三田文学』の編集長としてもご活躍ですが、いわゆる「文学」の世界に新しい風を吹き込ませようと大変な情熱をもってとりくまれておられるのが伝わってきます。

今、思わず「風」と書きましたが、この風はラテン語でいえば、風であり気息であります。つまり、スピリットです。

若松さんとは何度かお目にかかったことがありますが、ご自身、大変な知識と教養をお持ちなのにも関わらず、「勉強なんかしてはいけない」とおっしゃいます。表面的な知識や知的操作の巧みさの陰に隠れることなく、魂で「ほんとうの」何かに触れること、スピリットの息吹に触れ、それに震撼し、畏怖すること、そしてそれを生きることこそが重要なのだといつも強調されておられるのです。

若松さんのたたずまいは一見、おだやかで静かですが、その文章やお人柄に触れるとそのなかに熱いスピリットがふつふつとたぎっているのが伝わってきます。
たとえば、出版界に大きな一石を投じることになった、井筒俊彦の評伝の出版。井筒俊彦の存在は、丸山圭三郎や河合隼雄の紹介によってその名前だけは知っているという方も多かったのではないかと思いますが、数十カ国語に通じ、古今東西の宗教性を横断して一つの「構造体」を取り出そうとした、そびえたつ碩学の解説や評伝はこれまでありませんでした。市場原理などほかの要因もあったかとは思いますが、何より、多くの識者たちの足はこの巨峰を前にすくんでいたのでしょう。しかし、若松さんはそれに取り組まれた。丹念な資料の読み込みと、勇敢に井筒と内なる対話を積み重ねることによって、それを成し遂げられた。また井筒俊彦の全集を編まれているのも、若松さんです。

ぼくがトランスパーソナル学会のみなさんに若松さんをご紹介し、お話しを伺ってみたいと思う理由はもうおわかりでしょう。まずは、この若松さんのスピリチュアリテイにたいしての静かな情熱に触れていただきたい、というのが一つ。

そして具体的には、井筒俊彦についてもっと伺ってみたいということもあります。

井筒俊彦は、ユングが中心的役割を果たしたエラノス会議に何度も出席し、講演をしています。それを迎え入れて歓迎したのは、元型的心理学の祖であるジェイムズ・ヒルマンでもありました。

これまで、「トランスパーソナル」の源流としては、エサレンやCIISなどいわゆるカリフォルニア的な潮流がイメージされてきたのではないかと思いますが、さらにその源流をたどると、より深いヨーロッパ、アジアの精神性の再興を目指したエラノス会議が浮かび上がってきます。

その意味でも、今回の大会にふさわしいゲストとして若松さんをお迎えできることを心から嬉しく思っているのです。

鏡リュウジ プロフィール
占星術研究家、翻訳家。
平安女学院大学、京都文京大学客員教授。主な訳書にジェームズ・ヒルマン『魂のコード』(河出書房新社)など。

*大会での若松さんの講演タイトルは、「彼方のコトバ、コトバの彼方――スピリチュアリティの始原」です。以下、若松さんから、コメントをいただいています。(編集部)
「霊性(スピリチュアリティ)は、さまざまな姿で顕現する。文化、時代によって 同質の意味をもつものが、まったく異なる姿をして顕われることもある。それらは しばしば、言語を超えた「コトバ」として認識される。
鏡リュウジさんは、占星術という実践の中で、コトバの中に言葉を見ることを、 あるいは言葉のなかに不可視なコトバを見出すことを日常としている。今回の対話では、コトバの考察を通じて、霊性の淵源に少しでも近づくことができるのではないかと心から楽しみにしている。」

若松英輔 プロフィール
批評家、思想家。読売新聞書評委員、『三田文学』編集長。1968 年生まれ、慶應義塾大学文学部仏文科卒業。2007 年「越知保夫とその時代 求道の文学」で、第 14 回三田文学新人賞評論部門当選。『井筒俊彦 叡知の哲学』(慶應義塾大学出版会)など著作多数。2014 年4月から、東京新聞にて和合亮一氏との往復書簡、連載中(隔週)。