病態水準/健康次元とプロセスワーク

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『病態水準/健康次元とプロセスワーク』

病態水準と社会的コンテキストは、心理学の流派
を超えて学ばなければならないメタ次元のものです。

最近理解されて来たように、
例えば、私が日々実践している開業での心理療法を、
そのままスクールカウンセリングで行なったら、
自己愛的な心理士と思われ、学校の先生方との関係が
悪くなりかねません。

スクールカウンセラーには、開業のように相談室に
籠るばかりでなく、外的、行動的、ケースワーカー的
仕事が求められます。

一方、カウンセリングを企業で行なうには、
目の前のクライエントだけでなく、カウンセラーに
給与を支払う当の企業の利益を考慮しなければ
なりません(目の前のクライエントと企業の利害が
相反したとしても)。

つまり、カウンセラーはどこでも、いつでも
「純粋な」カウンセリングを実践することはできず、
カウンセラーが置かれた「社会的コンテキスト」を
尊重しなければならないのです(どの流派であっても)。

プロセスワークも例外ではありませんが、
ワールドワークは社会的コンテキストや、そこでの
ヒエアルキー/ランクを読むのに大変役立ちます。

もう一つ、メタ次元で大事にしなければならないのは、
「病態水準/健康次元」です。

例えば、ブレイクスルー的ないしはuncovering
(暴露、蓋外し)的手法は、抑圧の強い
「神経症水準」のクライエントに有効です。

(ほどんどの心理療法が、神経症水準を、暗黙の
前提として生まれました)

しかしそれを「統合失調症水準の」相談者に適用したら
どうなるでしょう?

おそらく統合失調症が悪化することでしょう。
ここでは蓋をはずすのではなく、
「蓋をする(cover)」ことで、自我主体を支える
ことが不可欠になります。

フロイドが信頼したポール・フェダーンや、トランス
パーソナルのケン・ウイルバーは、統合失調症水準には
何と「抑圧」できるようにサポートするのが重要!
と言います。

つまりどの流派のやり方も「純粋に」、「無邪気に」
使用することには危険や副作用が伴いかねないのです。

病態水準/健康次元について学ぶことが大事なのです。

このセミナーでは、プロセスワークや心理療法を
活かすために、各心理療法のメタ次元にある
「病態水準/健康次元」、具体的には

(1)神経症水準、

(2)人格障害水準:境界性人格障害水準と
自己愛性人格障害水準、

(3)統合失調症水準、の基礎について学びます。

心理、福祉、医療の実践家はもとより、カウンセリングや
プロセスワークの初心者の方のご参加も大歓迎致します!

===追記(6月24日)===
前回のお知らせで、神経症水準と統合失調症水準について
簡単に書きましたが、今回は人格障害水準について書きます。

昨晩開催したワールドワークに浮上したテーマは、「死と再生」でした。

その中で使われたメタファー(喩え)の1つが蝶の変態過程でした。

蝶は、青虫から成虫になるまで、2回の節目を迎えます。
(1)青虫からさなぎになるときと、
(2)さなぎから成虫になるときと。

昨日のワールドワークで特に注目されたのは、「さなぎ」の重要性でした。

青虫が茶色く、黒ずむ姿は、青くかわいらしい(?)状態の
死を想起させます。幼い子が青虫を飼っていたなら、青虫が
死んでしまったのではないかと心配して不安がるかも
知れません。

しかし蝶になるためには、この過程を経なければなりません。

青虫は、さなぎの中ではその原型を留めることなく、
どろどろ、ぐちゃぐちゃ状態にあることでしょう。

青虫は、1度『ちびくろサンボ』の虎のバター状態、
とろとろ状態になる必要があります。

しかし、ここで重要なのは、とろとろのバター、どろどろ、
ぐちゃぐちゃを受け止め、保持する「さなぎ(器)」
の役割です。

人格障害水準とは、いわば、さなぎの中(内容物、中身)の
状態、すなわちとろとろ、どろどろ、混乱にありますが、
この水準の課題は、それを抱える、受け止める、
包み込むしっかりとした良質な容器があるかないか、
という点にあります。

さなぎの中は、とろとろ、ぐちゃぐちゃでも、成虫に
変態/変容するための、力やエネルギーに満ちあふれて
おり、また本能に基づいた秩序が機能していることと
思われます。

人格障害、例えば境界性人格障害水準は、同じように
力やエネルギーに満ち満ちているのですが、器がないために
変態/変容することができない状態、苦しみと言えるかと
思います。

その器をユングは子宮に喩え、文化人類学者の
ビクター・ターナーは世界中の「未開社会」を参考に、
「リミナル(それは子宮と、なんと墓場を意味します!)」
(さなぎは青虫の墓場であると共に、成虫を産み出す
子宮でもありますね)、神田橋先生はあんこ(中身)に対する
皮(容器)と言いました。また、それを「圧力鍋」に
喩えるセラピストもいます。

人格障害水準とのワークには、ブレークスルーなどの技法
ではなく、変容、変態、生まれるための器の提供、
冬眠のための洞穴作りが中心になるのです。

とろとろ状態、混乱状態、バター状態は、ものすごい力、
エネルギー、熱などを発生させます。人格障害水準は、
力や情熱などを持っていないのではなく、むしろ過剰に
保持しているのです。

ですので、ここでのテーマは、そうした力、エネルギー、
熱、内圧によって破壊されない「圧力鍋」、「原子炉」の
ような器なのです。

それによって、変容、変態、出産過程が、初めて促される
(amplify)のです。そのプロセスには産みの苦しみが
伴いますが、大変意味の有る体験になるでしょう。

器作りのための「面接の構造化」や「関係作り」、
その他の重要点については、セミナーでお話し致します。

みなさまのご参加を心からお待ちしています。
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日時:6/28(日) 10:00~17:00

場所:都内

開場:9:50

参加費:21,000円(税込み)

講師:富士見ユキオ

お問い合わせ先:プロセスワーク研究会

FAX:03-5570-2860
E-mail:gdmwx113**ybb.ne.jp(**を@に変えてください)