リチャード・バック 『イリュージョン

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 高校生のとき、スピリチュアルな世界が好きな数学の先生がいた。毎回の授業でさまざまな「怪しいこと」を教える、「見えない世界」へいざなってくれる人だった。今になってから振り返ると、その先生はある意味「ヒッピー」みたいな人で、カウンターカルチャーを真正面から突き進む人だったのかな、と思う。

そんな先生が「夏休みの課題」として取り上げたのが、リチャード・バック「イリュージョン」(集英社文庫)。誤解を恐れずにざっくりとストーリーを説明すると、「神」から送られてくる「使命」をあなたはどう受けるか?という内容。具体的には、すべての物事から手を離し、流れのままに生きる救世主と、その救世主に救われたいという民衆が登場し、その民衆に飽き飽きした救世主が救世主を辞めようとする。

高校生のとき、どうして世の中はこんなに生きにくいんだろう?と感じていた自分を救ってくれた本でもあります。なるほど、自分がそう思えば世界もそう見えるし、すべてを手放せばすべてが手に入るのか、と。

旧版(村上龍訳)と新版(佐宗鈴夫訳)がありますが、村上龍のほうがお勧めです。ただし、旧版は、「あとがき」にも書いていますが、原著とはかけ離れた訳がされている点に注意。

諸富祥彦 『フランクル心理学入門

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高校生のときの「見えない世界」を知った衝撃から、大学時代は悶々と悩み続けました。ものの見方を変えれば世界は変わる。けれど、生きている意味はそこにあるのか?というものでした。自分はキリスト教徒ではないから「コーリング」という感覚は理解できない。「お天道様」に見られている感覚もあるから、無宗教とも言い切れない。

そんなときに出会ったのがこの本。
「人生には意味がある」と力強く語られるフランクルを追いかけた1冊です。フランクルのこの言葉は、よく彼の究極的な体験(アウシュビッツでの収容体験)があるからと思われるのですが、実はそうではない。彼が幼いころから感じていたことで、収容される前に論文として発表しようとしていた。でも収容されてしまい、「なにくそ」と鉛筆も持ち込めないバラックの中で道具をそろえ、必死に思い出して論文を「再生」したそうです。

そういう「使命感」のようなものが、もしかしたら自分には足らないのではないか?と21歳のときに感じ、いっそならこの研究をもっと突き詰めたいと、私は著者が当時教鞭を振るっていた千葉大学を訪ねました。それが、実はこの学会に入会するきっかけともなりました。

西光義敞「浄土真宗とトランスパーソナル心理療法」
(諸富祥彦編『トランスパーソナル心理療法入門』所収)

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トランスパーソナルのことを学び始めると、どうしても宗教の側面が色濃く出てきてしまうときがある。外国人とスピリチュアルな話をするときでさえ、「お前は何を信じているんだ?」と必ず聞かれる。けれど、なかなか「仏教徒です」とはいえない自分がいた。

大学はたまたま浄土真宗系の龍谷大学だったため、仏教学は必修だった。一生懸命がんばってみたけど、やっぱりよくわからない。よくわからないままに、たまたま開講されていた「仏教心理学」という授業に出たら、西光義敞先生と出会う。

西光先生は仏教はカウンセリングと似ていると説き、「真宗カウンセリング」を立ち上げその会長を長く務められた。トランスパーソナル学会の大会でも精力的に講演していたせいか、その授業でも遠くから聴講される方が毎回いた。でも、意外なことに履修していた大学生は私を入れて5人程度で、聴講者をいれても10人はこえない。つまり、密度の濃い授業だった。

とはいえ、先生が熱く語って教えてくれるのだけれど、私にはさっぱりわからないことがけっこうあった。当時、西光先生はもう引退されて70歳前半。病気をされて、ひょろひょろだったけれど、僕が疑問だった点は次の授業ではきちんとフォローアップしてくれたし、参考文献もたくさん教えてもらったり、もらったりして、たくさんのことを学ばせてもらった。

その中で一番感銘を受けたのが、草稿段階だけど、ということで見せてくれた「トランスパーソナル心理療法入門」所収の仏教心理学に関する小論。なぜその宗教を信じているのか?という西光先生の根幹に関わる話がそこに書かれていて、当時の、そして今の僕をも励ましてくれる言葉が、そこに詰まっています。